一般内科・外科
一般内科
動物たちも人間と同様、高齢化やストレスの影響で、様々な病気にかかるようになってきています。当院の一般内科では、消化器や循環器、呼吸器、泌尿器、皮膚、眼、耳、鼻、歯など、トータルな診療を行っています。
動物たちは体に不調を感じても、言葉などでその症状を伝えることができません。しかし、そんなときは何らかのサインを出しているものです。下記のような様子が見えましたら、あるいはいつもと違うな、と感じられましたら、なるべく早く、獣医師にご相談ください。
以下のような様子が見られましたら、早めにご受診ください。
- 食欲がなく、ご飯を残す
- 鼻水、くしゃみ、せきをする
- 度々嘔吐している
- 下痢をしている
- 食べているのに太らない
- 食べていないのに異常に太る
- 水を異常に飲むようになった
- おしっこの量が増えた
- いつもに較べると元気が無いようだ
- など
このような動物たちの発するサインは、時として見逃してしまう場合もあり、気づいたときには病状が進行しているということもありがちです。原因などに思い当たることがなくても、早期に検査をし、病気を発見できれば、適切な治療によって、重篤な病気への進行を防ぐことが可能です。
当院では、症状によって尿検査、血液検査、画像検査など、各種検査を丁寧、かつ迅速に行い、症状および進行度合いにあわせて適切な治療をおこなってまいります。また食事等、自宅でのケアの仕方、さらには病気を予防するためには、どのようなことに注意すればよいかのアドバイスを行うなど、より長く健康的に、家族であるどうぶつたちとの時間を過ごせるよう、ホームドクターとしてサポートいたします。
一般外科
当院では一般外科において、避妊・去勢の他、外科手術が必要な疾患の治療も行っています。手術に際しては、検査、診断を丁寧に行い、飼い主様とも十分にお話し合いをして、手術の目的を明確にし、鎮痛、モニタリングをしっかりとし、安全な手術を心がけています。
CT、MRI等による検査や、放射線治療など、より高度な検査・治療が必要と判断した場合は、大学病院など、二次医療施設へのご紹介を行います。
当院の一般外科では、以下のような症例を扱っています。
- 避妊・去勢
- 抜歯・スケーリング(歯石除去)
- 体表腫瘍
- 腹腔内腫瘍
- 外傷
- 異物誤食
- など
初めて受診される飼い主様へ
- 動物は慣れない場所に来ると不安や緊張を感じ、強く興奮しがちです。思わぬ事故やケガを避けるため、リードをつけたり、ケージに入れたりして、しっかりと管理することをお願いいたします。
- 診療に当たっては、日ごろの生活や、症状が出る前の状況など、お伝えいただきますと診療に役立ちます。生年月日、今まで罹った病気やけが、普段食べているペットフード(メーカー、種類等)、また治療に関するご質問等、メモなどでも結構ですのでお持ちください。またワクチン証明書や投薬履歴なども、あればで結構ですのでお持ちください。
予防接種
(およびフィラリア、
ノミ・ダニ予防)
毎日のお散歩やドッグラン等で他の犬と触れ合う犬はもちろん、ほとんど室内にいるという猫でも、ウイルスや細菌による感染症のリスクはあります。人間の風邪のように軽い症状のものもありますが、重篤になり命に関わるものもあります。その多くはワクチンによって予防できるものです。
予防接種の際には、獣医師が観察することで、思わぬ異常を見つけられることもできます。また、日ごろの様子をお聞かせいただいたり、飼育に関する悩みや疑問にアドバイスさせていただいたりする場にもなります(なお、狂犬病のワクチンは接種が法律で定められています)。
ペットホテルやドッグラン、トリミング等の施設では、ワクチン接種済みであることが利用条件になっていることが多くなっていますので、狂犬病はもちろん、任意のワクチン接種も考慮することをお勧めします。
ワクチンは、年齢や飼育環境によって摂取する種類が考慮されますので、ご相談ください。また副作用やアレルギー反応もゼロではありませんので、すぐに対応できるよう、午前中などのできるだけ早い時間帯の接種をお勧めします。
犬の予防接種
狂犬病ワクチン接種について
狂犬病予防のワクチンは、日本では「狂犬病予防法」により、毎年1回の接種が飼い主様に義務付けられています。狂犬病は犬だけではなく、人や猫、鳥など哺乳動物のすべてが罹りうる伝染病(人獣共通伝染病)で、致死率がほぼ100%という非常に恐ろしい、注意すべき病気です。
日本での発生事例は1957年以来なく、また海外で感染して日本国内で発症した事例も、1970年と2006年に各1例あるのみですが、中国や東南アジアでは毎年死者が発生しています。海外旅行中や輸入された動物から感染する可能性も否定できませんので、犬だけではなく人やそのほかの哺乳類の命を守るためにも、接種は必須です。
※混合ワクチンと同時接種することはできませんので、間隔を空け、別々に接種することになります。
混合ワクチンについて
狂犬病ワクチン以外に、任意の予防接種として混合ワクチンがあります。当院では、犬用としては5~8種の混合ワクチンを、実施しています。
犬の混合ワクチンでは、以下の感染症を予防できます。
- コアワクチン(致死率が高いため、すべての犬への接種が推奨されているワクチン)
-
- 犬ジステンパー
- 犬伝染性肝炎
- 犬アデノウイルスII型感染症
- 犬パルボウイルス感染症
- ノンコアワクチン(生育環境によって推奨されているワクチン)
-
- 犬パラインフルエンザウイルス感染症
- 犬コロナウイルス感染症
- 犬レプトスピラ感染症(イクテモヘモラジー)
- 犬レプトスピラ感染症(カニコーラ)
犬ジステンパーについて
はじめは目ヤニ、鼻水、発熱、食欲の低下などがみられ、麻痺や痙攣など重症化していきます。ニホンオオカミはこの病気により絶滅したと言われています。有効な治療法はなく、犬の致死率は50~90%とされ、完治しても、神経症状などの後遺症が出ることがあります。
犬伝染性肝炎
犬アデノウイルス(I型)の感染によっておこる感染症で、軽症の場合は鼻水が出る程度で、進行すると嘔吐や発熱、下痢、腹痛などが現れる場合があります。さらに重症化すると肝機能不全や低血糖による神経症状が起こることもあります。
犬アデノウイルス(II型)感染症
「犬伝染性喉頭気管炎」とも言われ、咳やくしゃみなど風邪に似た症状が出ます。犬伝染性肝炎を引き起こすI型よりも軽症で致死率も低いとされています。ただし他のウイルスや細菌との合併により重症化する場合もあります。
犬パルボウイルス感染症
下痢、嘔吐、発熱、脱水等の強い症状が表れ、さらに進行すると血便がみられることもあります。下痢や脱水の悪化によるショック症状で命に関わる場合もあります。特に子犬の致死率が高く、妊娠中のメス犬が感染すると、流産や死産に至る場合があります。
猫の予防接種
猫にも任意の予防接種として、混合ワクチンがあります。当院では、猫用としては3~5種の混合ワクチンを行っています。
※4・5種のワクチンをご希望の場合は事前にご連絡ください。
猫の混合ワクチンでは、以下の感染症を予防できます。
- 猫ウイルス性鼻気管炎(3種混合)
- 猫カリシウイルス感染症(3種混合)
- 猫汎白血球減少症(3種混合)
- 猫白血球ウイルス感染症(4種混合)
- 猫クラミジア感染症(5種混合)
- ※室内飼育の猫では3種混合が、外に出る猫では4種あるいは5種混合が推奨されています。
猫ウイルス性鼻気管炎
「猫インフルエンザ」とも言われ、くしゃみ、発熱、下痢、食欲不振といった風邪に似た症状がみられ、重症化すると急激に衰弱や肺炎、脱水症状を起こして死に至る場合もあります。結膜炎を併発することがあり、悪化すると失明の危険性もあります。
猫カリシウイルス感染症
猫ウイルス性鼻気管炎と似た症状のもの、口内に潰瘍を発症するもの、肺炎を起こすもの、腸に感染しますが特に症状が出ないものなど複数の型があります。重症化は少ないとされていますが、近年は「強毒全身性ネコカリシウイルス」の報告があり、注意が必要です。
猫汎白血球減少症
「猫ジステンパー」とも言われる胃腸炎で、激しい嘔吐や下痢、高熱などがみられます。子猫は血便が出るなど重症化しやすく、命に関わる場合もありますが、大人の猫では軽症で収まる場合もあります。感染力が非常に強いのが特徴です。
フィラリア症予防について
フィラリア症は、蚊によって伝播するフィラリアという寄生虫によって発症する病気です。心臓内や血管内に寄生し、咳や呼吸困難、血尿などの症状を引き起こし、命に関わる場合もあります。
フィラリア症の予防については、飲み薬・スポット剤または注射による予防薬を投薬します。その前にまず、すでにフィラリア症に感染していないかどうかを検査することが必要です。すでに感染してしまっている場合、予防薬を投与するとショック症状を引き起こしてしまう場合があるからです。
予防薬は、蚊から感染したフィラリアの幼虫が、心臓にたどり着くまでに、完全に殺してしまう薬剤です。飲み薬に関しては、月1回(1カ月間隔)の内服をします。基本的に蚊の活動が活発になる春から開始し、秋になって気温が下がり、蚊が活動停止して1カ月後には休薬できます(一年中蚊の活動が活発な地域では、冬でも予防薬を飲む必要があります)。
ノミ・ダニ予防について
ノミやマダニは散歩中など、外出の際に寄生する以外にも、人が外から連れてくる場合もあります。寄生されるとアレルギーや貧血など様々な病気を引き起こしてしまう場合もありますし、人にも感染して様々な病気の原因となることもあります。ノミやマダニはなるべくつかないように予防することが重要です。
ノミは約2000個の卵を産むと言われ、1匹ノミがいたら、50倍以上の卵・幼虫・さなぎがいると考えられています。寄生されると強いかゆみを感じ、皮膚に障害をもたらすなど、下記のように病気をもたらします。
- ノミアレルギー性皮膚炎
- ノミに吸血されることにより、唾液成分が体内に入って、アレルギー反応を起こします。激しいかゆみや痛み、湿疹、脱毛などを伴う皮膚炎です。
- サナダムシ(瓜実条虫)
- ノミの幼虫がサナダムシの卵を食べ、成虫になったノミをグルーミングなどの際に口に入れてしまうことで発症します。サナダムシは小腸に寄生し、下痢や嘔吐を引き起こします。
- 猫ひっかき病
- 感染した他の猫からノミを媒介して感染します。バルトネラ菌が原因で、猫に症状はありませんが、人間が引っかかれたり咬まれたりすると感染し、発熱や頭痛、リンパ節の腫れなどが現れます。
マダニは草むらなどに生息していて、自分の体の100倍もの動物の血を吸います。それにより吸血された動物が貧血を起こすこともあります。また様々な寄生虫やウイルスを媒介するので注意が必要です。中には人に感染するものもあります。マダニによって起こる病気には、下記のようなものがあります。
- 犬バベシア病
- バベシア原虫の規制により、赤血球が破壊され、食欲不振や貧血、発熱、黄疸などの症状が現れます。
- 猫ヘモバルトネラ症
- ヘモバルトネラという細菌の寄生によるもので、貧血や発熱などの症状が現れます。
- ライム病
- 動物たちだけではなく、人にも感染するもので、いぬでは神経症状や発熱、食欲不振などが現れ、人では皮膚や神経、関節などに炎症が現れます。
- 重症熱性血小板 減少症候群(SFTS)
- マダニを介して人にも感染する病気で、発熱や倦怠感、腹痛、下痢、リンパ節の腫れ、意識障害、言語障害、さらには出血しやすくなるなどの症状が現れ、重症化すると死に至ることもある恐ろしい病気です。
ノミ・マダニは、月に1回、予防薬を飲む、または背中につけることで予防することができます。予防薬の種類としては、以下のようなものがあります。
- 錠剤(月1回内服)
- スポット(月1回滴下)
- チュアブルタイプ、タブレットタイプ(月1回もしくは3カ月に1回内服)
予防薬は、それぞれの性格や生活スタイルによって、適したものをお勧めしています。また、近年ではフィラリア症予防も同時に行える薬剤もありますので、お気軽にご相談ください。
ノミやマダニの予防では、環境的にも寄せ付けないようにすることが大切です。以下のようなことに注意しましょう。
- いつも使っている布団やマットは、こまめにお掃除をする。
- それらはなるべく天日干しをして、日光消毒を行う。
- 草むらなど、ノミやダニがいる可能性のある所には、なるべく入らないようにする。
- ブラッシングなどの時、ノミやダニの有無をチェックする。
背中に黒い粒のようなものがついていて、つぶしたら赤くにじんだ、という場合は血を吸ったノミの糞の可能性があります。またかさぶたのように見えたものが、血を吸って膨らんだマダニであるということもあります。万が一、ノミやマダニを見つけた場合は、つぶさないようにしましょう。メスの場合、体内に卵を持っていて、それがちび散ってしまう危険性があります。
避妊・去勢手術
避妊・去勢手術は、オスでは精巣の摘出(去勢)、メスでは卵巣と子宮の摘出(避妊)を行います。本来、望まれない妊娠によって、不幸になる動物たちが生まれないようにするという目的がありましたが、近年では、避妊・去勢手術による動物たち自身の将来的な健康におけるメリットなども考慮されるようになっています。
とはいえ、避妊・去勢手術は健康な体にメスを入れることになるものです。リスクもまったくないわけではありません。避妊のみが目的であれば、妊娠の可能性のある時期のみ、オスとメスを隔離することによって、それは可能です。避妊・去勢手術にあたっては、飼い主様ともよくお話をし、どんな手術をするのか、どんなメリットやデメリットかあるのかを丁寧にご説明させていただき、ご納得の上、実施しています。
去勢手術(オス)のメリット
- 以下の病気の予防につながります。
- 前立腺肥大症
- 精巣腫瘍
- 肛門の周囲に発生する腫瘍
- 会陰ヘルニア など
- 攻撃性が低下して穏やかになり、しつけがしやすくなる傾向にあります。
- 尿のマーキング(スプレー行為)が減ります。
避妊手術(メス)のメリット
- 以下の病気の予防につながります。
- 乳腺腫瘍
- 卵巣腫瘍
- 子宮蓄膿症 など
- 発情時の出血、夜泣きなどが抑えられます。
- 幼い性格が維持されます。
去勢・避妊手術のデメリット
- 手術時の全身麻酔によるリスク
- 呼吸不全
- 心不全
- ショック症状
- 肝臓や腎臓への負担 など
- 縫合糸に対するアレルギー反応
- 持続的な出血(血液凝固機能に障害のある場合。事前の検査をおすすめします)
- 手術時の恐怖や痛みに対するストレス
- 手術の影響による潜伏ウイルスの発症(事前のワクチン接種をおすすめします)
- 将来にわたって子供ができなくなります。
歯石予防
歯石があるとプラーク(歯の表面や歯肉に付着した細菌とその産生物)が溜まりやすく、これが歯周病を悪化させてしまいます。すると、歯の根元に膿が溜まってしまい、最終的に歯が抜ける、さらに骨が溶けて骨折に至ることもあります。膿みが上あごの骨を溶かしてしまうと、鼻腔内に穴があき、口と鼻が貫通してしまうことで、膿性の鼻汁や鼻血、くしゃみが止まらないなどの症状が出ます。重症化すると命に関わる場合や、後遺症の危険性もあります。
また、歯石に溜まった細菌が、血中から心臓や腎臓、肝臓などに至り、何らかの障害を発症させてしまう場合もあります。こうした障害を予防するためにも、小さい時から歯磨きを習慣にし、歯石が溜まらないように予防することが大切です。
歯石除去(スケーリング)について
溜まってしまった歯石は、歯周病の予防や治療のためにも、除去することをおすすめします。歯石の除去は、寿命を伸ばすことにもつながると言われており、また口臭を低減させることで、動物たちとの時間も快適なものとなります。
歯石の除去は、全身麻酔にて行います。超音波スケーラーという歯科用器具を使用して歯垢や歯石を取り除くのですが、同時に歯の表面だけでなく、歯肉の間の「歯周ポケット」の中などまで、隅々を洗浄して綺麗にします。歯周病が認められる場合は、抜歯などの処置を同時に行うこともあります。無麻酔ですと、歯周ポケットの洗浄までは難しく、歯周病の治療に関しても、十分な処置ができない可能性があり、動物たちにも大きなストレスとなってしまいます。
歯石の除去後は歯の表面はざらついていて、新しい歯石が付きやすくなっていますので、ブラシやゴムの付いた器具と研磨剤により、歯の研磨を行います。歯の表面をつるつるにすることで、歯石が付きにくい歯にします。その後は再び歯石を付着させないためのホームケアが重要になります。当院では、ホームケアについても丁寧にアドバイスいたします。
歯石の除去に関しては、それぞれの年齢や歯石の状況、歯周病の処置の有無などによって、かかる時間などが異なります。また、高齢であったり、持病があったりすると、全身麻酔が行えない場合もあります。詳しく知りたい、あるいは不安のある飼い主様は、お気軽にお問い合わせください。